読書記録「医者に殺されない47の心得」:医者を疑い、自分で調べて考える

著者の近藤氏は医師でがんの放射線治療が専門ですが、「がんの9割は治療するほど苦しい思いをし命を縮める結果となるため、放置するのが一番いい」と主張しています。がん以外にも血圧、コレステロールなどに対する現代の医療に対して反対意見が述べられています。

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医者に殺されない47の心得
近藤 誠 (著)
アスコム
2012年12月13日発売

ISBN:978-4-7762-0764-1
1155円
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印象に残った内容を以下に挙げてみます。

  • がんには本物のがんと偽物のがんがある。本物のがんは見つけられる大きさになった時点で既に手遅れ、偽物のがんであれば放置しても問題ない。日本でがんと診断された患者が海外でもがんと診断されるのは1~2割程度。内臓や乳房を切り取ってみたらやっぱりがんではなかったということも起こっている。
  • がんは手術すると傷口から増殖が早まることがあり、抗がん剤は体に負担となり命を縮めることが多い。
  • 日本ではCT検査などが多く、放射線の医療被ばくが他国の数倍となっている。がんで死ぬ日本人のうち、3.2%は医療被ばくによるがんが原因と言われている。
  • 高血圧とされる血圧の基準値を、はっきりした理由のないまま下げることが行われている。基準値を決める基準作成委員の多くが製薬会社から巨額の寄付金を受け取っており、委員の医師11人全員に合計14億円が支払われた。基準値が下がった結果、降圧剤の売上は年間2千億円から1兆円以上へと約6倍になった。
  • 人間の体は、年を取ると脳や手足のすみずみまで血液を送るために血圧を上げるようにできている。薬で無理に血圧を下げることがフラつきやボケの原因になってしまう。
  • 極度の肥満はいけないが小太り程度でコレステロール値が高い方が長生きできる。コレステロールを薬で下げてもほとんどの人に病気を防いだり延命する効果は無い。
  • 減塩にこだわる必要はない。経済先進国で塩分摂取量が最も多かった日本人が世界最長寿である。塩分は不足すると生命の維持に支障をきたす。

 

著者の近藤氏の主張に対しては賛否が分かれているようです。この本のAmazonレビューや検索サイトで著者名を検索すれば反対意見も多く目に付きます。たしかに、読み方によってはがん患者やその関係者に絶望ばかりを与えかねない内容であるし、標準的な医療を否定するためなのか、極端な主張が多いようにも感じました。ただし、ほとんど治る見込みのない治療によって時間・お金・体力を消耗しながら更に命を縮める例も少なくないようなので、そういった不幸な例は減って欲しいとも思います。

血圧の基準値の話は、医者や製薬業界の思惑で基準値が決定されていることが事実であれば、国民全体への裏切り行為です。たった14億円の寄付で年間の売上が8000億円以上も増えるのならば製薬会社にとってはよい投資だったと言えますが、そもそもこんな不正の起こりそうな基準値決定の仕組み自体が間違っています。基準値決定委員会は少なくとも結果が確定するまでは、メンバーを外部に明かさない方がいいのかもしれないです。今回は1人当たり1億円強の寄付金でしたが、これが1人当たり100億円だったとしても製薬会社はすぐに元が取れてしまうでしょう。メンバーの倫理向上も必要ではありますが、仕組みとしてリスクのある要素は排除することも必要ではないでしょうか。

 

「医者を疑い、自分で調べて考える」ことが重要であると著者は述べていますが、著者自身も医者です。この本の内容も鵜呑みにするのではなく、しかし参考にできる部分は参考にしながら、今後の生き方を考えていきたいと思いました。